大手メディアのニューズウィークはまだモッキングバード作戦のままですね、批判的ですね。Φ(´゜π゜`)φ
https://www.newsweekjapan.jp/mutsuji/2018/08/qanon.php
自分の野球帽と赤ん坊のシャツに「QAnon」のロゴを描いたトランプ支持者(8月3日、ペンシルベニア州ウィルクスバリで行われたトランプの集会) Leah Millis-REUTERS
<アメリカに新たな陰謀論が生まれた。陰謀説を説くのは、匿名のネット投稿者「Q」。Qと支持者の勢力は「QAnon(Qアノン)」。ひょっとすると11月の中間選挙をも左右しかねない>
「月面着陸はなかった」「ユダヤ人が世界を陰で操っている」など、数々のデマをまことしやかに拡散してきたアメリカの陰謀論の歴史に今、新たな一章が加わろうとしている。
「Q」と名乗る匿名の書き手によるネット投稿が、中間選挙に向けてトランプ支持者の熱狂的支持を集め始めている。8月1日にフロリダ州で行われたトランプ氏の支持者集会のTV中継では、「我々はQだ(We are Q)」と書いたボードも映し出された。
Qの主張はトランプ支持だが、それとともに根拠の確認できない話、自分たち以外の人間に対する敵意、さらに神がかり的な物言いなど、陰謀説としての特徴も鮮明だ。
(QAnonのプロパガンダビデオ:レーガン以降の大統領はすべて犯罪者、戦争や貧困などの厄災はすべて、歴代大統領やハリウッドセレブ、CIAや大企業のせいだ)
例えばQによると、「いわゆるロシア疑惑を調査しているムラー特別検察官は、実は民主党とロシアの関係を暴くため、トランプ大統領によって任命された」となる。トランプ氏は無実であるばかりか、民主党とロシアの共謀を明るみに出そうとしているのだが、彼らの共犯者である大手メディアやエリート層にそれを妨害されている受難者なのだ、という。
こうした陰謀説がトランプ支持者を引き付ける現状は、トランプ政権の体質を物語る。
QAnonの主張とは
正体不明のQを中心とする勢力を、メディアは「匿名(Anonymous、アノニマス)」の略記「Anon」と組み合わせて「QAnon(キューエーノン)」と名付けている。
Qは2017年10月、アメリカの掲示板サイト4chan(日本の2ちゃんねるにあたる)など複数のサイトに記事を掲載し始めた。トランプを支持しているという以外は、真偽を確かめようがない内容が多い。以下はその例だ。
・ムラー特別検察官の「本当の標的」は、オバマ氏やクリントン氏ら民主党関係者だけでなく、ジョン・マケイン上院議員などトランプ氏に批判的な共和党関係者や俳優トム・ハンクス氏などハリウッド関係者も含まれる。
・これら「本当の標的」は皆、小児性愛者サークルのメンバーで、居場所を特定されるモニター機器を既にトランプ政権によって取り付けられている。
・連邦政府の活動を監督する監察総監室(OIG)は、2016年大統領選挙における民主党関係者の犯罪行為をまとめた報告書を隠蔽している。
・これら「腐ったエリート」を一掃するため、軍はトランプ氏に2016年大統領選挙への立候補を要請した(QAnonは議会や司法には強い不信感を持っているが、軍には好意的)
・ムラー特別検察官の「本当の目的」が政敵に気づかれないよう、トランプ氏は「追及されるふり」をしているだけ。
「本当は」「実は」と、まことしやかに説明しているが、客観的な根拠が示されないまま、特定の政敵に全責任を負わせるストーリー。それに沿って事実が都合よく配置されている。この点において、QAnonの主張は「月面着陸はなかった」説や「ユダヤの陰謀」説と変らない。
QAnonの支持者たち
しかし、それでもQAnon支持者は増えている。
QAnonの主張を支持者が解説したYouTube動画のなかには20万回以上に視聴されているものもある。
最近では、Qの主張を行動に移す例も出始めた。4月には、数十人のQAnon支持者がOIGを監督する司法省の前で、民主党関係者の犯罪行為を明らかにするよう求めるデモを行った。
また、Qがアリゾナ州ツーソンの砂漠地帯に児童買春と人身取引の巣窟があると書いたので、実際に探しに行った支持者もいる。ディープな取材に定評のあるVICE MEDIAによると、ツーソン在住のQAnon支持者らが5月末に砂漠を捜索し、ホームレスの小屋にあったバービー人形、革ヒモ、ポルノ雑誌だけを理由にこれを人身取引の巣窟と決めつけ、アリゾナ州当局に非常事態宣言を出すよう求める騒ぎとなった。
Qのメッセージは犯罪すら招いている。6月、アリゾナ州とネバダ州の州境にあるフーバーダムのそばのハイウェイを、銃で武装した男が「OIGの報告書を公開せよ」と要求して封鎖。QAnon支持者のこの男は、テロリストとして逮捕された。
7月末にはQがネット上、反トランプ派の著名な弁護士マイケル・アベナッティ氏の事務所の前に立つ人影の写真を投稿した。アベナッティ氏に対する脅迫もとみられている。
17の意味
隠然と広がるこの動きの中心にいるQとは何者か。それは定かでないものの、Qというハンドルネームは本名の頭文字ではないとみられる。
Qはアルファベット17番目の文字だが、トランプ氏に関しても17にまつわるエピソードは少なくない。
例えば、トランプ氏は大統領になる以前、首都ワシントンに17回足を運んだといわれる。また、4月に全米選手権を制覇したアラバマ大学アメリカンフットボール部のメンバーがホワイトハウスを表敬訪問した際、トランプ氏に贈られたユニフォームの背番号が17だった。
もちろん、これらは偶然にすぎないだろうが、トランプ支持者にとっては17が「真実のサイン」、「愛国者の番号」になっている。Qを名乗ることは、「腐ったエリートと対決する」トランプ氏との一体性を暗示することになる。つまり、Qは17という数字に一種の神秘的な意味合いをもたせることで、支持者をひきつけているのだ。
これを意識してか、最近ではトランプ氏自身も17を強調することがある。8月1日、トランプ氏はツイッターでムラー特別検察官と民主党による調査を「魔女狩り」と批判したが、それまで「13人の怒れる民主党議員」と表現していた部分を「17人の怒れる民主党議員」に変更した。
陰謀説を支える被害者意識
ユダヤ人やバチカンに関するものも含め、陰謀説は世界中に数多くみられる。そのほとんどは「自分たち以外の誰かによって世界が支配され、自分たちはその被害者だ」というストーリーで共通する。この被害者意識を核とする陰謀説は、QAnonにも顕著だ。
もともとトランプ氏は、企業の海外流出などによって衰退した白人中間層を主な支持基盤として勢力を広げた。つまり、トランプ氏の支持者の多くには、「グローバル化を目指したエリートの犠牲者」という自己認識がある。
ロシア疑惑をはじめ、疑惑やスキャンダルが噴出し、議会、司法、メディアなど各方面から批判を浴びる状況は、一部の支持者のトランプ離れを呼んでいる。しかし、それでもトランプ氏を支持する者にとって、トランプ批判の高まりは、被害者意識をさらに増幅させるきっかけにもなってきた。これは神がかりで荒唐無稽な主張を展開するQAnonが勢力を広げる土壌になったとみてよいだろう。
言い換えると、QAnonの台頭は、アメリカ国内でトランプ支持に揺らぎが生じていることと同時に、熱心なトランプ支持者の間で気に入らない事実を無視・拒絶する教条主義が強まる傾向を示している。それは同時に、陰謀説に支えられるトランプ政権の危うさをも物語るのである。